essay――miki side
放課後、知ってる顔に会った。
一つ下の、有名な子。ポニーテールの、可愛い女の子。源と同じクラスの、春日って子じゃなかったっけ?
男といっしょに歩いていた。
上体を寄せて、盛んに話しかけていた。
相手は誰だろう。
わたしは、少し、回り込んでみた。
──絶句した。
平野だった。
薄い鞄を小脇に抱えて、春日の話に相槌を打っていた。
別にうれしそうな感じでも、いやそうな感じでもない、普通の感じ。春日の方は、目がキラキラしている。
うわっ。
こいつ、絶対気がある。
ふいに平野がわたしに気づいた。
わっ。
よせっ。
平野が陽気に手を振った。
「知り合い?」
春日が尋ねる。
「先輩なんだ」
平野が答える。
「怖い感じの人ね」
わたしは、立ち止まった。
きっと、そんなふうにしか見えないんだろうな。いつも、黙ってばかりで、何も言わないから……。
「そうでもないよ。いい先輩だよ」
え?
わたしは耳を疑った。
平野って、もしかして、いい奴なのかな。
「時々、怖いけど」
……殺す。
わたしは尾行を開始した。頭の中は、ジェームズ・ボンドのテーマ。平野の奴、春日とどこか行くつもりだろう。
まさか……ラブホテル?
──追跡は呆気なく終わった。正門で、平野は春日と別れた。
え?
嘘?
思ったところで、くるりと振り返った。平野と目が合った。
「……い、いいのか」
「何が」
「送ってかなくて」
「だって、家、反対ですよ」
……駄目だ。全然気づいていない。
「先輩、送ってきましょうか」
平野の顔が笑っていた。
「却下」
言うなり、わたしは足早に歩き出した。耳……赤くなったの、見られちゃったかな……。